分子凝集体表面におけるエネルギー移動

(筑波大学物理工学系)山本恵彦、佐々木正洋


平成12年度は、反応分子から表面単原子層(分子凝集体)へのエネルギー移動における構<造依存性を明らかにする目的で、室温で安定に存在するPt(111) 表面上のCs単原子層の形成と消滅のダイナミクス解明を目指した。進捗状況は以下の通りである。
(1)超音速He原子線鏡面反射強度の表面温度依存性を計測することにより、Pt(111)表面上における3種類のCs単原子層超構造が作り出す原子レベルのポテンシャルエネルギー表面の凹凸(corrugation)の変化を測定し、それぞれの構造の形成と消滅のダイナミクスを解明した。下図は室温から0.2K/sの速度で表面を昇温したときの、He原子(27 meV)の鏡面反射強度変化を示す。初期(室温)でのcorrugationが最も大きい(2 x 2)構造が最も熱的に安定であるが、450 K以上では不安定になることが分かる。また、500 K以上ではすべての構造は不安定になり、950 KではCs原子は表面から脱離する。(2 x 2)構造においては、Cs原子から下地のPt表面への電荷移動が大きくイオン性の強い結合になるためのcorrugationが最も大きくなる(STM計測によれば最大振幅は約0.06 nm)。この時、仕事関数は最小値をとることがケルビン法による仕事関数計測によって確かめられた。

(2)上記の結果をまとめて論文を投稿した。

[1] T.Kondo, H.Kozakai, T.Sasaki, S.Yagyu and S.Yamamoto,J.Chem.Phys. (Submitted)
[2] Y.Yamada, H.Utsuyama and S.Yamamoto, Proc. 6th Int. Symp. on Advance Physical Fields
[3] T.Kondo, H.Kozakai, T.Sasaki, S.Yagyu and S.Yamamoto, Proc. 6th Int. Symp. on Advance Physical Fields


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