分子凝集体表面におけるエネルギー移動

(東北大多元研) 楠 勲、高岡 毅


平成12年度の目標は、分子凝集体表面にエネルギー制御した原子を照射したときのエネルギー移動、およびそのエネルギーによって誘起される現象を明らかにすることである。具体的な研究成果および進捗状況は以下のとおりである。

(1)表面反応は通常、固体表面上の吸着種のみを考慮して解釈されているが、近年気体分子の表面への衝突過程が表面反応に与える影響が注目されている。分子凝集体表面に対する衝突過程の影響を明らかにするために実験を行った。ベンゼン分子の吸着したNi(100)表面に約1.2eVの運動エネルギーを持つキセノン原子を衝突させたところ、脱離や吸着状態の変化は観測されなかった。以前に行った実験では、吸着していた窒素分子がキセノン原子との衝突により脱離する現象が観測された。この違いは、分子凝集体においては衝突によって得たエネルギーが凝集体内に分散してしまったためである、と考えられる。
(2)一酸化炭素と水素の吸着したNi(100)表面にキセノン原子を照射したところ一酸化炭素の吸着位置が変化することがわかった。そのメカニズムについて現在解析中である。
(3)装置面では、気相原子・分子のエネルギー制御用の超音速分子線装置と振動解析用のFTIR装置を組み合わせた実験装置を製作中である(下図)。FTIR装置は真空排気型であり高い感度を持つことが期待される。

[1] T. Takaoka, M. Terahara, and I. Kusunoki, Surf. Sci. 454 (2000) 218-221.


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