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Seminar
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シリーズセミナー 極限コヒーレント光科学 24回目 「時間分解2光子光電子分光を用いたフェルミ縮退形成ダイナミクスの理論と強相関電子系ARPESにおけるコヒーレント成分の消失」
標題: シリーズセミナー 極限コヒーレント光科学 24回目 「時間分解2光子光電子分光を用いたフェルミ縮退形成ダイナミクスの理論と強相関電子系ARPESにおけるコヒーレント成分の消失」
日時: 2014年6月18日(水)  午後3:00~
場所: 物性研究所本館6階 第1会議室(A636)  
講師: 富田憲一
所属: 山形大学
要旨: 1.時間分解2光子光電子分光の理論
~伝導帯に光励起された電子のフェルミ縮退形成に向けた緩和ダイナミクス~
近年レーザーの性能が高まり、半導体を光励起することで巨視的な数の電子を伝導帯へ励起させることが可能になっている。金属中の電子がごく少数個励起された時には、クーロン相互作用に起因する電子緩和が重要な役割を果たし、主な緩和過程はきわめて急速に完了する。一方、半導体において、巨視的な数の電子が伝導帯に励起された場合、クーロン相互作用を介した電子緩和は、エネルギー散逸を伴わず有効な熱浴として機能しない。したがって伝導帯電子は、電子‐格子相互作用を介してフォノンを放出しながらフェルミ縮退形成へと時間発展する。フェルミ縮退に近づくと低エネルギーフォノンしか緩和に寄与できなくなるため、緩和速度は著しく遅くなることが予想される。これまでに、大阪大学の谷村-金崎両氏らによって、GaAsやInPに対して時間分解2光子光電子分光による電子緩和の観測が行われている。本講演では、光励起された巨視的な数の電子が、光学及び音響フォノンとの相互作用を介して伝導帯内で緩和していく過程を理論的に考察する。実験で観測されているサブピコ秒までの急速な緩和とその後の遅い緩和を、スペクトル形状の時間発展まで含めて再現できたので、その詳細について報告する。
2.強相関電子系の角度光電子分光(ARPES)理論
ARPESは言わずと知れた、固体のバンド構造を直接測定できる貴重な実験手段であるが、電子間相互作用や電子格子相互作用に起因する、所謂インコヒーレント成分がスペクトル形状に如何に影響するかは物質依存があり慎重に議論する必要がある。私たちは、経路積分を量子モンテカルロ法で見積もることで、電子間相互作用を近似なしに取り込み光学スペクトルを計算する手法を開発した。この手法を用いて、ARPESにおける電子間相互作用の効果を調べた結果、中間相関領域よりも相互作用が強いときには、光電子スペクトルはインコヒーレント成分によって支配されており、バンド成分はほとんど含まれていないことが明らかになった。このことは、強相関電子系において、ARPESのピークをトレースしても正確なバンド分散は得られないことを意味している。
世話人: 渡邊 浩 (内線:63377)
e-mail: hwata :at: issp.u-tokyo.ac.jp