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Seminar
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[その他セミナー/研究会]
新物質セミナー:極低温における量子液体
標題: 新物質セミナー:極低温における量子液体
日時: 2011年7月20日(水)  午後4:00~
場所: 物性研究所本館6階 第5セミナー室(A615)  
講師: 山下 穣 氏
所属: 京都大学大学院 理学研究科
要旨:  極低温において現れる量子液体相は、ヘリウム3,4における超流動相など、量子統計性の違いなどの量子力学的効果を顕著にみることのできる相である。量子液体相は熱揺らぎとの競合によって表れた長距離秩序を量子揺らぎによって融解させた相と見ることができるが、2次元スピン系においても幾何学的フラストレーションと量子揺らぎの効果によってスピンの長距離秩序を融解させることで「量子スピン液体」とよばれる新奇な状態が現れる可能性があり、現在までに様々な種類の量子スピン液体が理論的に提案されている。特に近年、理想的な二次元三角格子やカゴメ格子を持つ物質群が発見されており、この問題への実験的取り組みに注目が集まっている。

本講演では量子スピン液体の候補物質である有機物k-(BEDT-TTF)2Cu2(CN)3とEtMe3Sb[Pd(dmit)2]2における我々の研究について紹介したい。二次元三角格子を持つこれらの有機物は圧力によって容易に金属化することからモット転移近傍の絶縁相にあると考えられており、その結果量子スピン液体状態が現れている可能性が指摘されている。量子スピン液体の素励起としてフェルミ面を持つスピノン励起やバイゾン励起などの新奇な励起の存在が指摘されており、その詳細の解明に注目が集まっている。我々はその素励起を明らかにするため、熱伝導率測定、熱ホール測定を行い、二つの有機物が異なる素励起を持つ様子を明らかにした。[1,2] また、EtMe3Sb[Pd(dmit)2]2におけるスピン励起の詳細を探るために50 mK、32 Tまでの極低温、強磁場磁気トルク測定も行ったのでその結果も合わせて紹介したい。

また、EtMe3Sb[Pd(dmit)2]2においては三角格子の異方性を正方格子から一次元へと変化させたときの反強磁性秩序と電荷秩序の間の量子臨界点近傍に存在しており、両隣との物質との混晶から量子臨界点近傍の詳細を調べられる可能性がある。量子臨界点における物性の異常は、強相関電子系における非フェルミ液体的振る舞いや異方的超伝導、一次元イジングスピン系における新奇なスピン励起など様々な研究がおこなわれており、これら量子臨界性の研究への展開などの可能性についても議論したい。

[1] M. Yamashita et al., Nature Physics 5, 44-47 (2009).
[2] M. Yamashita et al., Science 328, 1246 (2010).
世話人: 瀧川 仁 (内線:63225)
e-mail: masashi :at: issp.u-tokyo.ac.jp