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[物性研ニュース]
徳永准教授、上床教授らの論文がJPSJ Papers of Editor's Choiceに選出
  同数の電子と正孔が共存して熱平衡状態にある系(電子正孔系)は、物性物理学の縮図とも言われています。基底状態で電子と正孔が共存する半金属に磁場を加えると、電子と正孔の数や両者間の相互作用などを連続的に制御でき、電子正孔対の量子凝縮状態のような新奇量子相が実現すると期待されています。代表的半金属であるビスマスやグラファイト(および単原子層化したグラフェン)の磁場中物性は現在でも精力的に研究され、物性物理学の発展に歴史的な役割を果たしてきました。

  今回東大物性研の徳永研究室と上床研究室、兵庫県立大、電気通信大のメンバーからなる研究グループは、強磁場・高圧力という多重極限環境下におかれた黒燐で半金属状態を実現し、その磁気輸送特性を調べました。同グループの研究によって、この半金属状態では14 Tの磁場印加で抵抗値が1,000倍以上増大する巨大な正の磁気抵抗効果を示すこと、また11 T以上の磁場中ではすべてのキャリアが最低エネルギーを持つ量子準位に落ち込んだ量子極限状態を実現できること、などを初めて示しました。これらの実験結果から見積もったキャリアの数や有効質量はビスマスやグラファイトと匹敵する値でした。ビスマスのような顕著なスピン軌道相互作用がなく、グラファイトのような二次元性のない黒燐は電子正孔系の普遍的物理を調べる格好の舞台とみなせます。今後さらなる強磁場、高圧、低温という多重極限環境下での実験を通して、新たな量子状態の探索などが期待されています。

  本研究成果は、日本物理学会が発行する英文誌Journal of the Physical Sosciety of Japan (JPSJ)の2015年7月号に掲載予定(6月24日オンライン公開済)であり、JPSJ編集委員会において”Papers of Editors’ Choice”に選出されました。

掲載論文:
K. Akiba, A. Miyake, Y. Akahama, K. Matsubayashi, Y. Uwatoko, H. Arai, Y. Fuseya, and M. Tokunaga, “Anomalous Quantum Transport Properties in Semimetallic Black Phosphorus”, J. Phys. Soc. Jpn. 84, 073708 (2015).