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Seminar
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[物性研談話会]
角度分解光電子分光による銅酸化物高温超伝導体の研究
標題: 角度分解光電子分光による銅酸化物高温超伝導体の研究
日時: 2014年6月12日(木)  午後4:00~午後5:00
場所: 物性研究所本館6階 大講義室(A632)  
講師: 近藤 猛 氏
所属: 東京大学物性研究所
要旨: 銅酸化物高温超伝導体は約30年前に発見された。それ以来、物性研究の対象として長らく主役を担ってきたにも関わらず、その高い超伝導臨界温度(Tc)が生み出される機構に関しては未だ統一した見解が得られていない。鉄ヒ素系物質において銅酸化物に次ぐ第2の高温超伝導の発現が2008年に確認され、その比較対象が登場したことで、改めて銅酸化物高温超伝導体に注目が集まっている。
バーディーン、クーパー、シェリーファーの理論(BCS理論)で説明される超伝導体では、Tcにおいて全方位に亘り均一な超伝導ギャップが開き、フェルミ面が消失する。一方、銅酸化物高温超伝導体では、Tc以上かつ、キャリア量によっては室温以上にもなる遥か高温からエネルギーギャップ(擬ギャップ)が開き始める。また、 この擬ギャップは特定の方位でのみ発現し、フェルミ面の一部を消失させる。その結果としてアーク状のフェルミ面(フェルミアーク)が形成される擬ギャップ状態は、電子の占有準位と非占有準位の境界を定義できない奇妙な状態である。高温超伝導の発現機構を解明する上で、この擬ギャップと超伝導ギャップの関係を理解することが重要な鍵を握っている。
本講演では、角度分解光電子分光を用いた研究から浮き彫りとなった銅酸化物高温超伝導体が持つ特異な電子状態を紹介する。特に、超伝導相を阻害する “擬ギャップ”秩序状態と、電子対の形成に伴う“電子対形成ギャップ”状態とがTc以上の高温から競合しつつ発達する振る舞いを解明する。

【講師紹介】
近藤猛所員は、酸化物高温超伝導体が示す特異な電子輸送現象の起源を解明する研究で博士号を取得されたのち、近年では擬ギャップと超伝導ギャップの関係を光電子スペクトル強度の詳細観察から解明する研究で高く認知されています。このたび極限コヒーレント光科学研究センターの所員として着任され、極限レーザーを用いた角度分解光電子分光装置の開発と、それを通して見えてくる新奇な物質科学の開拓を目指しておられます。
関係所員: 野口 博司 (内線:63265)、山下 穣 (内線:63350)